トリプルメディアというフレームワーク、すなわちメディアを Paid media, Owned media, Earned media に分類してコミュニケーションをプランニングしようというトレンドがあります。消費者までもがメディアとして機能している今日の環境に対応した、すばらしいフレームワークだと思います。
このフレームワークはシンプルですが、シンプルであるがゆえか、マーケッターによって解釈にばらつきがあるようです。社内外で議論する中で、解釈にズレがあるなと感じたポイントと、ADKインタラクティブ総研の解釈を紹介します。
【Paid media を使わないことが賢い?】
Paid media は、文字通り金銭を支払って利用するメディアなので、Paid media を利用せずに目的をとげられるなら、それにこしたことはありません。しかし、Owned media や Earned media が無料かといえば、制作や運営のコストがかかります。総合的な視点では、Paid media を利用するほうが割安なこともあるでしょう。
また、短期的かつ確実にモメンタムを引き上げたい商品、理性的に比較検討されない商品には、Paid media が有効です。ビールや清涼飲料水などは、発売から数週間以内に販売実績を残さないと棚落ちしてしまうので、じわじわクチコミで広めようなどと言っていられません。ウェブサイトで比較検討してから買いに行く商品でもないので、自動車や不動産などと比較すれば広告が機能しやすいでしょう。
【私たちのブランドに Owned media はあまり必要ない?】
自動車、不動産、パソコン、金融商品など、高額で失敗が許されない商品を購入するとき、消費者は機能、品質、価格などを理性的に比較検討します。ウェブサイトでは比較検討を支援するコンテンツを提供すべきでしょう。一方、飲料、菓子、石鹸など、低額で失敗が許される商品は、そこまで真剣に検討されません。ウェブサイトで機能や品質を紹介しても、わざわざ訪問してくるひとは多くないかもしれません。
しかし、低関与商品カテゴリーにとってウェブサイトの重要性が低いとはいえません。例えば、商品に興味がなくても楽しめるエンターテインメントを用意して、それで消費者を引き付けることができれば、競合より優位に立てるでしょう。機能や品質の特長が理解されなくても、消費者の気持ちの中でその商品の存在感が大きくなっていれば、購買に結び付きやすくなります。
また、Owned media はコーポレートサイトやブランドサイトとは限りません。商品パッケージ、カタログ、自社の店舗や販売員なども Owned media です。そこまで視野を広げてプランニングすべきでしょう。
【予算がないので Earned media を活用したい?】
Earned media は、文字通り稼ぐメディアです。Paid media や Owned media と比較すると、支出なくして評判を稼げるような印象が抱かれがちです。しかし、Earned media は波紋や共鳴のようなものです。Paid media や Owned media を通じて刺激を与えなければ、Earned media は発生しません。
世の中には、いわゆるソーシャルメディア施策を展開せずとも話題になるものがあります。例えば、アップルの商品です。アップルは、商品そのものが話題性のある Owned media なので、新しい商品が発表されるたびに Earned media に波紋が広まります。ソフトバンクは、白戸次郎の広告が話題性のある Paid media なので、新しい広告が公開されるたびに Earned media に波紋が広まります。
Earned media は、Paid media や Owned media の作用を受けます。Earned media のプランニングは、Paid media のプランニングであり、Owned media のプランニングなのです。
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